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これぞお正月の味
「うちは焼いた角餅」、「私はとろりと煮た丸餅」など、お正月が近づくと、お雑煮談義に花が咲きます。餅の形やだしの味など、地方や家庭ごとにお雑煮は千差万別。特徴的な15種類をご紹介します。
三陸沿岸の一部地域ではおいしいものを「クルミ味」と表現する。そのおいしいものの代名詞であるクルミを擦ったものに、砂糖やしょうゆで味を付けたたれを椀に添え、お雑煮の餅に付けて食べる。お雑煮はしょうゆ味の汁に焼いた角餅を入れたもの。龍泉洞観光会館お雑煮くるみ餅本舗ではこのお雑煮くるみ餅の取り寄せもできる。
写真提供:早野商店
全国から人が集まる東京では、出身地によってお雑煮の味も様々。だが、昔ながらの江戸風雑煮といえば、カツオ節やコンブでだしをとり、しょうゆで味付けした汁で、焼いた餅の香ばしさやだしの風味を味わうシンプルなお雑煮。焼いた角餅に小松菜、鶏肉が定番の具。ミツバやユズの皮、海苔を飾って、香りを楽しみながらいただく。
写真提供:築地仲卸 伏高
豪雪地帯でもある新潟では、正月のための餅つきや塩ザケ作りなどは、単に「ハレ」のごちそうを作るというだけではなく、越冬のための準備でもあった。サケの産地でもある新潟では、お雑煮にもサケとイクラが登場。具だくさんのお雑煮には塩ザケを入れ、イクラをトッピングする家も多い。イクラは加熱せずにのせることもあれば、さっとゆでてからのせることもある。
写真提供:マルシン食品株式会社
かつて富山湾で揚がったブリは、雪深い山中を重い荷を背負って運ぶ歩荷(ぼっか)によって、高山を通り、信州へと届けられた。お正月のごちそうで食べる魚は西日本はブリ、東日本はサケと、大きく2つに分けられるが、長野県でも松本などいわゆる鰤街道沿いの土地はブリ文化圏で、お雑煮の主役は塩ブリだ。松本では白い部分が多く、柔らかい食感の松本一本ネギを使う。
写真提供:松本市商工観光部観光温泉課
コンブでだしをとった味噌仕立ての汁に、丸餅と茎付きのカブが入っているのが福井流。カブを用いるのは「株を上げる」から縁起がよいためだ。味噌は白味噌の家も赤味噌の家もあり、写真は赤白合わせた味噌を使っている。具もカブのみの家のほか、カブのほかにニンジンや鶏肉を入れたり、カツオ節をかける家もある。丸餅は焼かずに煮る。
全国餅工業協同組合 / 協力:マルシン食品株式会社
名古屋の雑煮はいたって質素。カツオだしのしょうゆ味で、具は餅菜だけの家も多い。「名(菜)を上げる」といわれる餅菜は尾張地方で採れる小松菜の仲間。小松菜より葉の色が濃く、柔らかい。本物の餅菜は手に入りづらく、正月間近には小松菜が「餅菜」「正月菜」と名を変えて店頭に並ぶ。トッピングはカツオ節が定番だが、黒砂糖をのせる家もある。
写真提供:東邦ガス株式会社
丸餅やサトイモ、ダイコンなどの入った西京味噌の汁に、ふんわり花カツオをのせれば出来上がり。とろりとした餅と甘くこくのある汁が絡みあう。争い事がなく物事が丸く収まるようにと、具は丸く切る。コンブやカツオでだしをとってもよいが、上質な味噌で作るなら、その旨みを味わうために、だしをとらずに水で調理するのがおすすめだ。
写真提供:株式会社本田味噌本店
奈良では味噌仕立てのお雑煮の餅に甘いきな粉を付けて食べる。なかでも山添村などでは人の頭になるようにと、大きな頭芋が主役のお雑煮にきな粉を添える。四角く切った豆腐とコンニャクには白壁と土蔵に見立てて蔵が立つように、輪切りにした野菜と丸餅には1年円満に過ごせるように、黄色のきな粉には豊作になるようにという願いがこめられている。
写真提供:「大和の新郷土料理」
ブリ、アユ、ハマグリ、黒豆など、島根では地域によりお雑煮の主役はいろいろ。出雲地方でも、松江市や出雲市平田地区のあたりでは小豆雑煮を食べる。今では甘いぜんざいの家が多いが、本来の小豆雑煮は甘くないもの。柔らかくゆでた餅を塩味のすまし汁に入れて煮小豆をのせ、かつては「ハレ」の日の貴重なごちそうであった砂糖をその上にかけて食べる。
写真提供:にほんばし島根館
出雲市平田地区の十六島(うっぷるい)湾近辺の岩場の海岸で手摘みされる十六島海苔(別名かもじ海苔)は、江戸時代から珍重されてきた極上の岩海苔。出雲平野や奥出雲のお雑煮には欠くことができない。煮干やコンブ、カツオ節でだしをとったしょうゆ味の汁に丸餅を入れ、海苔をのせれば磯の香がふわりと立つ。海苔は酒でほぐしたものをのせる方が香り高いが、緑色になるまで煮てもよい。
写真提供:島根PR情報誌「シマネスク」
広島県の山あいにある比婆(ひば)地方の庄原市高野町でも、出雲の十六島(うっぷるい)海苔を使ったお雑煮を食べる。十六島が高野町では訛ってオップリという。年末に出雲から行商のおばさんが売りにくる海苔を買い、お雑煮に使う。すまし汁に湯がいた餅を入れ、酒で溶いた海苔をのせる。餅はつきたてをむしろの上に並べ、両面に小判のような模様を付けた縁起のよいものだ。
写真提供:庄原市高野支所
広島では、出世魚のブリを使ったお雑煮を食べる家が多い。家によっては頭や骨もだしをとるのに使って、塩ブリ丸1匹をむだなく使う。しょうゆ仕立ての汁にブリや青菜、餅などを盛るが、角餅を焼く家や、丸餅を煮る家、焼く家があり、さまざま。また、広島は牡蠣の産地。「福をかき寄せる」縁起のよい食べ物として、お雑煮に入れる家も多い。
イリコだしでしょうゆ味のお雑煮には、頭芋3つと、その上にうちちがえに十字に重ねられた2丁の豆腐が鎮座するだけ。そんな、餅のない珍しいお雑煮は、昔土地の人々が安徳天皇をサトイモと大豆でもてなしたところ、「大豆は豆腐にするように」といわれたことにちなむもの。本来は雑穀の餅、白い餅、あんこ餅の3段重ねを食べたあとにこれを食べる。
写真提供:三好市観光課
コンブとカツオ節でだしをとった白味噌仕立ての汁にあん餅を入れ、青海苔を振る。ダイコン、ニンジン、サトイモ、青菜など、家によって具は様々。他地方の人たちからはギョッとされることも多いが、讃岐人にとっては、なくてはならぬ正月の味だ。砂糖が貴重だった時代、せめて正月のお雑煮は贅沢にと祝った先人たちの気持ちがこめられている。
写真提供:香川県「さぬき味の歳時記」
古くから交易で栄えた長崎では、お雑煮にも山海の幸が盛りだくさん。具が10品以上入ることも多く、なかでもブリは欠かせない。根菜や青菜のほか、鯛や鶏肉、エビ、カマボコ、干しナマコやクワイなどを入れることもある。しょうゆ仕立ての汁には焼いた餅を入れる。汁のだしはカツオやコンブからとる家もあるが、焼きアゴ(トビウオ)からとる家も多い。
写真提供:長崎市商工部商業振興課
※このページで紹介している「主な具」は各都道府県の一般的な具材で、掲載の写真とは多少異なることがあります。