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温泉効能学

湯気立ち上る温泉で、ストレスにまみれた体をのんびりとほぐし、湯上がりに冷えたビールを一杯…これぞ日本人の至福である。しかし、ただつかっていればいいというものではない。古来より日本には「湯治」という賢い習慣があるように、温泉には、自然の治癒パワーがみなぎっているのである。ここはひとつ温泉を知り、自らの体に役立てよう。

その1 温泉とはなんぞや

その内容は、昭和23年(1948)7月10日公布、同年8月9日施行された「温泉法」により、きっちりと規定されている。すなわち温泉とは「地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、」次の一つ以上に該当するものである。

  • 地中から湧出する際の温度が25度以上
  • 1kg中に、ガス性のものを除く溶存物質を1000mg以上を含有
  • 1kg中に、遊離二酸化炭素、リチウムイオン、メタほう酸など温泉法で指定された18種の物質一つ以上について、それぞれ設定された基準値以上を含有(右表を参照)

というわけで、鉱石や薬品を入れこんだ湯を天然温泉とは呼ばない。また逆に、いくら冷たくとも上記の成分を含んでいれば、鉱泉や冷泉でも立派な温泉なのである。

したがって、温泉は泉温によって以下の4つに分類されている。

  • 冷鉱泉……25度未満
  • 低温泉……25度〜34度未満
  • 温泉 ……34度〜42度未満
  • 高温泉……42度以上

また、温泉を水素イオン濃度(pH=ペーハー)から見た分け方もあり、以下の5つに分類される。最近は、酸性泉の秋田県の玉川温泉や群馬県の草津温泉など、効能豊かで湯量の豊富な温泉地が人気を集めている。また、肌がツルツルするので美肌の湯ともいわれるアルカリ性泉も女性の人気が高い。

  • 酸性泉……pH3未満
  • 弱酸性泉……pH3〜6未満
  • 中性泉……pH6〜7.5未満
  • 弱アルカリ性泉……pH7.5〜8.5未満
  • アルカリ性泉……pH8.5以上

さらに温泉法では、施設内の見やすい場所に、環境省令で定めるところにより、温泉の成分、禁忌症および入浴または飲用上の注意を掲示しなければならないことになっている。

2000年を過ぎたあたりから、レジオネラ菌、温泉の枯渇・偽装、入浴剤の混入などの温泉をめぐるさまざまな問題が発生した結果、平成17年(2005)5月24日から、温泉法施行規則が改正され、温泉利用施設において、温泉に加水、加温、循環装置の使用、入浴剤添加、消毒処理などを行っている場合は、その旨とその理由を掲示しなければならないこととなった。また、平成26年(2014)7月に「鉱泉分析法指針」が改定され、泉質の中の含アルミニウム泉、含銅泉がなくなり、含よう素泉が追加された。泉質ごとの効能についても見直しが行われた。詳しくは、その4の泉質による傾向と対策を参照のこと。

物質名 必要な含有量
(温泉1kg中)
溶存物質(ガス性のものは除く)1000mg以上
遊離二酸化炭素(遊離炭酸)250mg以上
リチウムイオン1mg以上
ストロンチウムイオン10mg以上
バリウムイオン5mg以上
総鉄イオン10mg以上
マンガン(U)イオン(第一マンガンイオン)10mg以上
水素イオン1mg以上
臭化物イオン5mg以上
よう化物イオン1mg以上
ふっ化物イオン2mg以上
ひ酸水素イオン(ヒドロひ酸イオン)1.3mg以上
メタ亜ひ酸1mg以上
総硫黄1mg以上
メタほう酸5mg以上
メタけい酸50mg以上
炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)340mg以上
ラドン20×10-10Ci = 74Bq以上(5.5マッヘ単位以上)
ラジウム塩1×10-8mg以上

※上記のうち1項目でも満たしていれば、「温泉法」に規定される温泉になる

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その2 温泉の禁じ手

温泉には禁忌がある。そもそも温泉療法とは、泉温・泉質・水圧などの刺激に対するカラダの順応反応を利用するところにあるので、反応を起こし得ないような消耗状態、逆に過敏状態にある場合は適さないのである。

すなわち、発熱時・すべての急性疾患・進行期および重症状態・妊娠初期と後期などの場合は、温泉浴に適さない。また、高血圧症・動脈硬化症・心臓病・呼吸器病・高齢者の場合は、42度以上の高温浴を避ける。さらに、泉質により薬理作用が異なるので、自分の症状にあった温泉を選ばないと逆効果となるおそれがある。

温泉の禁じ手

【泉質の禁忌】

  • 硫黄泉、酸性泉は、皮ふや粘膜の過敏な人、特に光線過敏症の場合は避ける。
  • 硫黄泉、酸性泉は、高齢者で皮ふが乾燥している人は避ける。
  • 塩化物泉・炭酸水素塩泉の場合、高血圧症、腎臓病、その他一般にむくみのある人は、多量に飲用しない。
  • 二酸化炭素泉、硫酸塩泉、硫黄泉、酸性泉は、下痢をしている時は飲用しない。
  • ヨウ素を含む泉質の場合、甲状腺機能昂進症の人は飲用しない。
  • 泉質が重複している場合はそれぞれに該当させる。

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その3 入浴の心得

温泉に入った後はぐっすり眠れる。これは、さっぱりスッキリといった心理効果だけでなく、前述した刺激によりかなりのエネルギーを消費しているためである。例えば、40度の湯に20分間の入浴すると、約200キロカロリーを消費する。すなわち、温泉の刺激に対する十分な受入態勢が必要なのである。

【入浴時の心得】

  • 入浴前には30〜60分の休憩をとる。
  • 貧血状態を招きやすい空腹時、消化不良を招きやすい食事直後の入浴を避ける。飲酒直後の入浴は事故の元。
  • 温泉に入る際は、十分にかけ湯、かぶり湯をし体をお湯に慣らす。かけ湯の順番は下肢から上肢、最後に頭から湯をかぶるのが望ましい。
  • 入浴後は肌に付いた湯を洗い流さず、タオルで押さえる程度にする。これは温泉成分の肌への浸透を妨げないためである。ただし過敏肌の場合は、湯ただれを起こしやすいので適宜洗い流す。また、循環式浴槽の温泉の場合も上がり湯をかけて流す。
  • 本格的な温泉療法を行うための必要期間は、2〜3週間が適当。温泉療法医の指導を受けるのが望ましい。

【入浴回数の目安】

  • 健康な人……1日2回〜3回
  • 高齢者、乳幼児、体の弱い人……1日1回〜2回

【時間の目安】

  • 熱めの湯……10分
  • ぬるめの湯……20分〜30分

入浴の心得

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その4 泉質による傾向と対策

平成26年(2014)7月に泉質を決定するルールを記した「鉱泉分析法指針」が改定された。それに伴い、泉質名や適応症も改定された。温泉分析書は10年以内に分析したものを掲示する決まりなので、今後10年は温泉の効能は新旧の適応症の過渡期となる。新しい温泉の浴用による一般的適応症は、以下のようになった。また、新しい各泉質ごとの泉質別適応症は、各泉質の旧効能の下に記したので、対比してみたい。

新・温泉の一般的適応症

【新浴用】筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進

単純温泉

無色透明、無味無臭の、日本ではもっともポピュラーな温泉。泉温が25度以上で含有物質が温泉水1kg中に1000mg未満と少なく、刺激が弱いので、高齢者でも安心して入浴できるほか、病後回復期や外傷後の療養などによい。「名湯」といわれる温泉が多く、高血圧、動脈硬化、神経症などを含めて多くの病いに効くとされる。

【浴用】すべての温泉の一般的適応症の神経痛、筋肉痛、関節痛、打ち身、慢性消化器病、痔疾、冷え性、疲労回復など
【新浴用】自律神経不安定症、不眠症、うつ状態+一般的適応症

二酸化炭素泉

温泉水1s中に遊離炭酸1000mgを含み、炭酸ガスの気泡が肌に付くのが特徴。「心臓の湯」といわれ、毛細血管を広げて血圧を下げる効果がある。冷鉱泉や低温泉が多いが、保温効果があるので湯上がり後も身体はポカポカだ。飲むと清涼感があり、胃腸病によい。日本にはこの泉質の温泉は少ない。

【浴用】高血圧症、動脈硬化症、切り傷、やけど+単純温泉の効能
【飲用】慢性消化器病、慢性便秘
【新浴用】切り傷、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症+一般的適応症
【新飲用】胃腸機能低下

炭酸水素塩泉

旧泉質の重曹泉は無色透明なアルカリ性の湯が、皮ふの角質をやわらかくして脂肪分や分泌物を洗い流し、しっとりとした肌になる。「美人の湯」といわれる温泉が多い。旧泉質の重炭酸土類泉は、鎮静作用があり、炎症を抑える働きをする。飲用すれば、痛風、慢性胃炎、糖尿病に効き、入浴すれば、じんましん、アレルギー性疾患などに効く。

【浴用】慢性皮ふ病、切り傷、やけど+単純温泉の効能
【飲用】糖尿病、痛風、肝臓病、慢性消化器病
【新浴用】切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮ふ乾燥症+一般的適応症
【新飲用】胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)

塩化物泉

単純温泉と並んで、最も数の多い温泉。保温効果が高く、「熱の湯」ともいわれる。温泉名に「塩」とつくところはほとんどがこの泉質である。その名のとおり、なめると塩辛いのも特徴で、浴用では関節痛、筋肉痛などの症状を和らげ、飲用では胃腸病に効果がある。

【浴用】慢性婦人病、慢性皮ふ病、切り傷、やけど+単純温泉の効能
【飲用】慢性消化器病、慢性便秘
【新浴用】切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮ふ乾燥症+一般的適応症
【新飲用】委縮性胃炎、便秘

硫酸塩泉

マグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどを多く含み、大別すると、便秘や胆道疾患に効く芒硝泉、鎮静効果に優れ高血圧や動脈硬化の予防になる石膏泉、苦い味に特徴がある正苦味泉に分かれる。「中風の湯」「きずの湯」ともいわれる。

【浴用】動脈硬化症、慢性皮ふ病、切り傷、やけど+単純温泉の効能
【飲用】糖尿病、痛風、肥満症、胆石症、慢性胆のう炎、慢性便秘
【新浴用】切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮ふ乾燥症+一般的適応症
【新飲用】胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

含鉄泉

旧泉質名の鉄泉と緑ばん泉にあたる。鉄泉は、鉄分が多く浴用・飲用ともに貧血症や更年期障害に効果がある。湧きだしたときには透明であるが、空気に触れると酸化して褐色になるのが特徴。ただし褐色に濁った湯の効果は落ちている。「眼の湯」といわれる緑ばん泉は、皮ふや粘膜を引き締める収れん作用が強く、慢性の皮ふ疾患や結膜炎といった、慢性の粘膜疾患に効果がある。手足の多汗症や静脈瘤にも効果を発揮する。

【浴用】月経障害+単純温泉の効能
【飲用】貧血
【新浴用】一般的適応症
【新飲用】鉄欠乏性貧血

硫黄泉

硫化炭素ガスが含まれるため、卵が腐ったような独特な匂いと白濁色の湯が特徴。毛細血管を広げ、血圧を下げる作用があり、浴用、飲用ともに療養効果は高い。温泉治療に適した泉質である。

【浴用】慢性婦人病、慢性皮ふ病、切り傷+単純温泉の効能
【飲用】糖尿病、痛風、慢性便秘
【新浴用】アトピー性皮ふ炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害を加える)
【新飲用】耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症

酸性泉

「直しの湯」「仕上げの湯」といわれる殺菌効果の高い温泉。水虫、湿疹など、慢性の皮ふ病によく効くが、肌にしみるような強い刺激があり、湯ただれを起こすことがあるので注意したい。日本特有の泉質である。

【浴用】慢性皮ふ病+単純温泉の効能
【飲用】慢性消化器病
【新浴用】アトピー性皮ふ炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症+一般的適応症

放射能泉

一般的にはラジウム泉といわれ、多くの病いに効くため昔から療養向けの名湯に多い。痛風、糖尿病、循環器障害、神経痛に効くとされ、飲用すれば尿結石などにも効く。

【浴用】動脈硬化症、痛風、胆石症、慢性婦人病、慢性皮ふ病+単純温泉の効能
【飲用】痛風、胆石症、慢性消化器病
【新浴用】高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎+一般的適応症

含よう素泉

平成26年(2014)7月の「鉱泉分析法指針」が改訂された時に追加された泉質。よう化物イオンを温泉水1kg中に10mg以上含むと含よう素泉になる。よう素は活性度の高い元素で、強い酸化力で殺菌作用を発揮する。コレステロールを下げ、動脈硬化の予防にも効果がある。

【新浴用】一般的適応症
【新飲用】高コレステロール血症

※【浴用】は浴用の効能、【飲用】は飲用の効能を示す。平成26年(2014)7月に改定された新しい泉質別適応症は、【新浴用】【新飲用】として、以前の効能の下に記した。

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その5 主な新旧泉質名対照表

旧泉質名 新泉質名 掲示用新泉質名
単純温泉

単純温泉

アルカリ性単純温泉

単純温泉
単純炭酸泉 単純二酸化炭素泉 二酸化炭素泉

重炭酸土類泉

重曹泉

カルシウム(・マグネシウム)−炭酸水素塩泉

ナトリウム−炭酸水素塩泉

炭酸水素塩泉
食塩泉 ナトリウム−塩化物泉 塩化物泉

純硫酸塩泉

正苦味泉

芒硝泉

石膏泉

硫酸塩泉

マグネシウム−硫酸塩泉

ナトリウム−硫酸塩泉

カルシウム−硫酸塩泉

硫酸塩泉

鉄泉

炭酸鉄泉

緑ばん泉

鉄泉

鉄(II)-炭酸水素塩泉

鉄(II)-硫酸塩泉

含鉄泉
【硫黄泉】 硫黄泉
(1)単純硫黄泉 単純硫黄泉
(2)含食塩硫黄泉 含硫黄−ナトリウム−塩化物泉
(3)含食塩重曹硫黄泉 含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉
【硫化水素泉】
(1)単純硫化水素泉 単純硫黄泉(硫化水素型)
(2)酸性硫化水素泉 酸性−含硫黄(・ナトリウム)−硫酸塩泉(硫化水素型)
(3)土類硫化水素泉 含硫黄−カルシウム(・マグネシウム)−炭酸水素塩泉(硫化水素型)
(4)重曹硫化水素泉 含硫黄−ナトリウム−炭酸水素塩泉(硫化水素型)
(5)塩化物硫化水素泉 塩化物硫化水素泉
(6)硫酸塩硫化水素泉 硫酸塩硫化水素泉
酸性泉 単純酸性泉 酸性泉
放射能泉 単純放射能泉、単純弱放射能泉など 放射能泉
- 含よう素泉 含よう素泉
※各施設の料金は、原則、それぞれの取材時での料金を掲載しています。